6月のみこころの道
2025年07月29日

永田佳之先生は今年度はサバティカルの年でありながら、お忙しい時間を縫ってズームで講義をしてくださいました。フィレンツェ所在のユニセフでは研究課題に取り組んでいらっしゃる中、京都で講演を依頼された時間の合間に講義をなさり、先生ご自身がRefreshされた中身の濃い内容でした。

フィレンツェに咲く花
講師:
永田佳之 教授 (聖心女子大学教育学科教授)
国際理解教育の歴史と現代社会」
<ウォームミング アップクイズ>

"Museo degli innocenti" [innocenti= 子供の権利に関する調査・ユニセフの政策提言を支援する]
イタリア フィレンツェの教会 ⇒16~18世紀の赤ちゃんポスト(養育院・保育院)跡、ユニセフが同施設内に入っている美術館。 【当時】
イタリア フィレンツェの教会 ⇒16~18世紀の赤ちゃんポスト(養育院・保育院)跡、ユニセフが同施設内に入っている美術館。 【当時】
- 名前がない子供が多くいた⇒"innocenti"と名付けられた。
- 飼い葉おけに寝かせられ、施設に預けられた。→イエスの誕生と重なる。
- 教育機能もあり、職人や修道者などになるカリキュラムが組まれていた。
- 美術館内に半分に切られたコインなどが保管されていた。半分は母親の手元に保管され、いつか母親と再会するときに合わせられるようにしていた。それがその子供に母親がいた証になっている。
- 捨て子であっても大切に扱われる街としてフィレンツェが機能していた。
【ユニセフとイタリア】
- 子どもの権利条約批准にあたりイタリア政府機関も尽力⇒同じ建物で活動していた。
<1. 国際理解教育はいかに生まれたか>
- 人はなぜ戦争を繰り返すのか⇒正解はない。コロナとの闘いは戦争なのか。
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"innocence":純真無垢の意味。赤ちゃんがその象徴。
聖書:イエスは子どもたちを指して「子どものようでなければ神の国に入れない」と言った。 - ユニセフの活動は人道主義:純真無垢な赤子を救う。長期的な支援開発を実施。
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国際理解教育の概略史
⇒1922年発足の国際知的協力委員会が源泉となって、第二次世界大戦後にユネスコ(国連教育科学文化機関)が発足。
⇒「相互の風習や生活を知らない、無知偏見を通じて戦争が起こった」として、無知と偏見を正す教育を軸としている。
⇒ユネスコのミッション:教育・科学・文化+コミュニケーション
<2.国際理解教育のミッション>
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書籍「地球家族-世界30か国のふつうの暮らし」 家の中のものを全部出している写真より
⇒日本:世界一モノが多い、8年後に同じ家族で写真を撮ると家具・家電が一新している。
⇒災害への対応や家の建材で考えたときに先進国=サスティナブルとは一概に言えない
⇒何を「豊か」だと感じるかは人によって異なる
⇒「モノ」とは何かを考えることが重要。「たかがモノ、されどモノ」。 -
今、1番欲しいものを1つ挙げてください。
⇒「地球家族」のブータンの家庭:8年後、村に電気が通り、今まで物質的な豊かさに興味がなかった人が、豊かになりたいと思うようになった。
⇒日本:家族の中の会話が少ない国第1位、時間が欲しい人が多い。時間が欲しいことを考えることは自己理解につながる。
<3.国際理解教育のフロンティア>
教育勧告:1974年勧告⇒2023年勧告
増えた項目:平和、グローバルシチズンシップ、ESD、SDGs、環境、気候変動、テクノロジー
共通している項目:人権、国際理解
⇒1974年:人と人の関係。人間中心。
⇒2023年:人と人だけでなく、人と自然・人とテクノロジーとの関係性へ見直し
「なぜ」という問いを中心にする。
⇒人間がによるコントロールが不能になり、AIテクノロジーが暴走する可能性
⇒自分理解(=国際理解):右翼政党の台頭している現在、権力発言に左右されるのではなく、普遍的な言葉を考え直すこと、思想としての自分理解が重要。
⇒フランシスコ前教皇:戦争は人間が起こすもの、愛の実践が必要。教育は知識の習得だけでなく、対話が大切。対話を通して自己相対化(=自分を客観的に見る)ことができる。
文責:杉木美穂